魔性の傷跡 第2話 『狂飆(きょうひょう)の姫君』
魔性の傷跡
第2話 『狂飆(きょうひょう)の姫君』
【登場人物】♂2♀2不問1
ルティア(21歳)♀:至高の美女 いつも悲しげな表情をしている。
ラセル (26歳)♂:ディルス国の若き王。
カザック(48歳)♂:ディルス国の宰相。
リザイア(18歳)♀:マリーガルド国の王女。ラセルのはとこ。
ナレーター不問
【役表】
ルティア♀:
ラセル♂:
カザック♂:
リザイア♀:
ナレーター不問:

ナレーター「ディルス国、300年の長きに渡り他国との交易を閉ざした王国。
 
      自分を助けたマールの無実を主張するため、自らの胸に剣を刺したルティア。
      もう二度と覚める事のない眠りにつくつもりであったが、見知らぬ部屋で目を覚まし
 
      自らが再び命を救われた事を知る。」
(ノック→即、扉を開ける音)
ラセル「お目覚めか、自殺女。」
ルティア「……王様。」
ラセル「ラセルだ。5日後の正午、意識回復。ふん、あの薬屋の読みが当たったな。」
ルティア「マール……マールは?」
ラセル「お望み通り釈放したよ、仮だがな。」
ルティア「……そう……良かった。」
ラセル「お前は馬鹿か?お前が死んだところでマールの無実など証明されるわけがないだろう。
      そしてお前の無実もだ。何を考えてる。
    
     この状況がお前の計算だとしたら相当のやり手だと警戒しなくてはならない。」
ルティア「私はただ……従いたくなかったの。でも、おっしゃる通りだわ。
      何も無実が証明されるわけではないわね。王様、それなのに何故私の命を救ったの?」
ラセル「理由は2つある。1つ、この国を侮辱されたからだ。」
ルティア「……」
ラセル「お前はこの国は『腐っている』、『この国の法律に殺されるのはごめんだ。』そう言ったな。」
ルティア「……他国を受け入れずして、国が発展するとは思えない。
     その法の為に、罪のない命がどれだけ犠牲になったかわからない。」
ラセル「言われっぱなしで死なれるのは気分が悪い。負けず嫌いな性分でね。
     お前には、お前が嫌うこの国の法に従ってもらう。ただし、命は奪わない事にした。」
ルティア「……何故」
ラセル「2つめだ、お前の心が嘘偽りなく澄んでいると、感じたから。」
ルティア「……」
ラセル「もちろん、私も自分の直感だけで決める事は出来ない。
    お前が優秀な潜入者であるという可能性は消えないのだからな。
    よってお前は我が国の捕虜とする。カザック!」
カザック「失礼します。」
ラセル「宰相のカザックだ。」
カザック「お初にお目にかかります。ご紹介に与りました、カザックと申します。
      貴方の今後につきまして、簡単にご説明致します。」
ラセル「俺は今からマリーガルド国の件がある。頼んだぞ。」
カザック「承知致しました。」
(ラセル退室)

カザック「さて、ルティア殿。動けますか?少し散歩に行きましょう。」
ナレーター「胸に鈍い痛みを抱えながらも、ルティアはカザックの言葉に従った。」
カザック「まずは捕虜としての条件をお話し致します。」
ルティア「条件……?」
カザック「貴方には1日のうち16時間を先程の部屋で過ごしていただきます。
    
      拘束具は使いません、失礼ながら貴方の体を調べさせていただきましたよ。
      身体能力は全く脅威にならないと判断しました。
      残りの8時間は城内の決まった場所を移動していただいて結構です。今からご案内致します。
  
      ただし、監視は24時間行われています。ご了承ください。」
ルティア「……そう。」
カザック「暗い顔をなさらないでください、お美しさが曇りますよ。
     それに、これは異例の事態だというご自覚はお有りですか?」
ルティア「……そうね、私のような捕虜に宰相様が当てられるなんて、無い事ね。普通は。」
カザック「ご理解いただけているようで安堵致しました。ラセル王は貴方に関心がお有りです。
      なので、私は王のご意志に沿います。
   
     さて、あちらに見えるのが戦闘訓練場『アルス』です。この城内で最大の空間です。」
ルティア「……なんて広さ……」
カザック「入っていただいても結構ですが、殺気だった戦士は理性を失う事もあります。
     怪我をなされませぬよう、ご注意ください。」
ルティア「ああいった場所は……苦手です……。」
カザック「王も毎日あちらで訓練の時間を取られるのですよ。この国のシンボルと言える場所ですね。
     ちなみに、この事は諸外国(しょがいこく)にも広く知られている事です。
 
     ディルスは世界最強の剣技国。剣の力を持ってして、300年間この国を守り通しました。」
ルティア「何故、そうまでして国を閉ざすの。」
カザック「それはね、奪われる一方だったからですよ。優れた戦闘技術、豊富な資源、財力……
     その全てを奪われ続けたのです。」
ルティア「豊かな国が、貧しい国に与えるのは間違った事ではないわ。『奪われた』だなんて……」
カザック「ディルスも、300年より以前、与え続けた時代がありました。
     しかし近隣国家はディルスに依存する一方だった……向上の意志がないのですよ。
     むしろ、より一層怠惰であり続けるのです。与えられる事、奪い取る事だけに血眼になる。
     経済が外部から腐敗しだす恐怖を知っていますか?それは悲惨なものですよ。
     長き苦難の時代を経て、ディルスは決断したのです。
     向上の意志を持つ3国と血縁による同盟を交わし、その他を絶つ事を。
     最初の100年は、それは酷い争いが各地で起きましたがね・・・
     その時代を勝ち抜きディルスはさらに強くなりました。現在に及ぶ主な交易状況は
     文化をマリーガルドから、食料品をウェルナンから、そして……
     対魔性防衛能力をクラリオンから……」
ルティア「……。」
カザック「おや、顔色がお悪いですね。少し歩き疲れましたか?」
ルティア「……いえ。」
カザック「ちょうど中庭に着きました。こちらで休んでまいりましょう。」
ルティア「………………綺麗な庭……」
カザック「お気に召しましたか。出来る限り自然をそのままの姿に、ここに移して参りました。
     維持するのは大変ですが。」
ルティア「…………とても……素敵な庭ですね。木々が生きている。」
カザック「ありがとうございます、ご興味がお有りならば、もっと詳しくご説明致しましょうか。」
ルティア「いいえ、結構です。……少し……鳥の声が聞きたいので……」
カザック「…………」
ナレーター「しばし、沈黙の時が過ぎた。暖かな木漏れ日の中
      ルティアの表情が少し和らいだのをカザックは見ていた。」
カザック「さてルティア殿、簡単ではありましたが私の話はこのくらいにさせていただきたいと思います。
     何か、ご質問等ありませんかな?」
ルティア「……ありません。」
カザック「そうですか、ではこちらにも一つお聞かせいただけますか?」
ルティア「……何でしょう……」
カザック「貴方は、どこから来たのです?」
ルティア「……」
カザック「不自然なのですよ。どう考えても。」
ルティア「……」
カザック「お答えいただけませんか?永遠に捕虜のままでいらっしゃるおつもりか?」
ルティア「……」
カザック「失礼、お怪我も良くないうちに答えを焦りすぎましたかな。顔色が真っ青です。」
ルティア「……」
カザック「そろそろ部屋に戻りましょう。帰り際に礼拝堂と書物庫をご覧いただけます。」
ナレーター「そういって宰相は優しく微笑んだ。だが、
      ルティアにはその微笑が仮面のように見えたのだった。」
【ラセル王執務室】
リザイア「ですから、来期にはこのドレープを効かせたラインを絶対に流行らせたいんです。
     素敵だと思いません?ラセル様。」
ラセル「そうですね。」
リザイア「甲冑のデザインにもきっと取り入れられると思いますわ、ちょっと重さは出てしまいますけど
     衝撃を吸収する効果も期待出来ますもの。どう思われます、ラセル様。」
ラセル「そうですね。」
リザイア「……ラセル様!」
ラセル「あ、何です?」
リザイア「私不満ですわ、年に4度しかお会い出来ないのに全くの上の空!
     私がマリーガルドからどれだけ心躍らせて参ったか、ラセル様はご存知ないのですわ!」
ラセル「いや、違うんです。すみません。」
リザイア「何が違いますの!」
ラセル「今日の訓練で……胸を打ちまして。少々痛むのです。」
リザイア「まぁ大変、私お助けしたいですわ。」
ラセル「いや!結構!明日は冬の衣裳会です、会の主役であるリザイア姫は
 
    そろそろお休みになった方が宜しいかと」
リザイア「……まぁ、お優しいのですね。」
ラセル「(※ホッとする)」
リザイア「睡眠不足は美容の大敵ですものね、ラセル様。
     明日は私もっと素敵になっていますから、褒めてくださいましね。」
ラセル「……はい。」
リザイア「嬉しい!明日が楽しみですわ。おやすみなさい、ラセル様!」
(リザイア退室、扉の閉まる音)
ラセル「……はぁ。嵐のような姫だな。それに比べて……
  
    …………比べて……か。」
ナレーター「その頃、ルティアは部屋で一人、自らの胸の刺し傷を見つめていた。」
ルティア「……思っているほど深くなかったのね……もう少し左だったら死ねたのかしら…………」
ナレーター「ノックの音と同時にカギを開けてラセル王が部屋に入ってきた。
        ルティアは慌ててシーツで肌を隠した。」
ラセル「おっ……と。タイミングが良かったようだな。」
ルティア「……」
ラセル「そう怖い顔をするな。なにも夜這いに来たわけではない。
    珍しい果物があったから持ってきてやったんだ。夕食は粗末なものだっただろう。」
ルティア「私は捕虜なのでしょう、何故捕虜らしく扱わないの。」
ラセル「ふん……珍しいから。かな。」
ルティア「珍しい?」
ラセル「ああ、珍しいさ。ディルスに侵入する者などそう多くはいない。
    特にお前のようなケースは……。」
ルティア「興味本位で動いているの?王様。」
ラセル「ラセルだ。……そうだな、興味本位か。その通りだな。
    あはははは。まぁ食べろ。(果実を差し出す)」
ルティア「いらないわ、王様。」
ラセル「ふん。釣れないな。……では、衣服には興味がないか?」
ルティア「服?」
ラセル「ああ、明日この城は服や飾り物で埋め尽くされる。
    年に4度開かれる『衣裳会』という退屈なパーティだよ。
    季節のデザインや素材をマリーガルド国から営業されなくてはならない。お前も出席しろ。」
ルティア「何故?」
ラセル「興味本位だな。捕虜のお前だが、着飾って出席してみろ。
    どこの王族かと注目の的だろうな。最高に笑える。あはははは。」
ルティア「私が優秀な暗殺者だったらどうするの。」
ラセル「ほう、自分も殺せないお前に、人が殺せると?」
ルティア「実力を隠す技術に優れているかもしれないわよ。今この場で、貴方を殺すかもしれない。」
ラセル「…………暗殺者、か……」
ルティア「……ええ。」
ラセル「…………見てみたいのかもな。俺は。」
ルティア「……え?」
ラセル「夜分、邪魔したな。」
ナレーター「突如顔色を変えたラセル王は足早にルティアの部屋を去っていった。
      去り際の王の顔は憂いを帯びていた。」
ルティア「……あんな顔、初めて見た。」
 
【謁見の間】
ナレーター「翌日、ディルス城は朝から剣の音を消し、代わりに香水の匂いを漂わせていた。」
ラセル「……耐え難い。」
カザック「我慢なさってください。衣料品は大事なものです。」
ラセル「匂いはいらんだろう。」
カザック「良い香りじゃありませんか。汗の染み付いたディルス城もたまにはリフレッシュさせなくては。」
リザイア「ラセル様ー!」
ラセル「……リザイア姫。」
カザック「これはこれは姫君、今日はまた一段とお美しい。」
リザイア「あら、ありがとう宰相様。申し訳ありませんけど、ちょっと遠慮してくださいます?
      私ラセル様とお話したいの。」
カザック「失礼致しました、それではラセル様。私はこれにて。」
ラセル「……カザック……(恨めしそうに)」
ナレーター「ディルス城内はマリーガルド国の使者達により、煌びやかに飾りつけられるのであった。
      メインはダンスホール。
       夜になり楽団の音楽と共に豪華に着飾った人々が集いつつあった。
       最新のデザインを身にまとうマリーガルドの使者達に
       ディルス人は羨望(せんぼう)の眼差しを向けた。
 
       中でもリザイア姫はとりわけ見事な衣裳を纏っていた。」
カザック「いやぁ、今季はまた一段と斬新なデザイン。さすがでございます。」
リザイア「ええ、ありきたりなのは飽きてしまったんですの。」
ラセル「(独り言)目がちかちかしてきた…………」
リザイア「あ、あの緑の髪飾りをつけている婦人をご覧になって。
      彼女のドレスは北の民族衣装のデザインを取り入れてますの。
      これから寒い季節になりますもの。ねぇ、ラセル様」
ラセル「そうですね。暖かそうで何よりです。」
リザイア「……ラセル様!」
ラセル「え?」
リザイア「……昨日のお約束、お忘れですか?」
ラセル「……あ、……ああ。リザイア姫。そのドレスとてもお似合いですよ。」
リザイア「まぁ、嬉しいですわ。どこがお気に召しました?」
ラセル「え……えっと。色が……華やかで、、とても良いですね!」
リザイア「さすがラセル様、染料にもこだわってますのよ。例えばこのレースの……」
ナレーター「その瞬間ダンスホールが、ざわめいた。」
ラセル「……ルティア。」
ナレーター「至ってシンプルなドレスを纏ったルティアがホールへ足を踏み入れた。
       それだけでその異質さにホール内が静まった。ルティアは王へ歩み寄る。
       煌びやかな衣裳の婦人達の中で地味すぎるそれは、かえってルティアの容姿を際立たせた。」
ルティア「お招きに預かり、光栄です。」
ナレーター「それはあからさまな社交辞令であった。しかしあまりに優美なその身のこなしに
      ラセルは言葉を失った。」
ラセル「…………」
リザイア「……ラセル様?」
ラセル「…………」
リザイア「まぁ、なんて美しいお方!お名前をお聞かせいただけますか?」
ルティア「ルティアと申します。」
リザイア「ラセル様、私この方とお話したいですわ。少しお借りしてよろしいかしら?」
ラセル「……あ、あぁ。」
カザック「ごゆっくり。」
リザイア「私、星空が見たいですわ。バルコニーに行きましょう、ルティアさん。」
ナレーター「リザイアはルティアの答えを待たず、バルコニーへ向かった。
       ルティアは早々に立ち去るつもりだったが、仕方なくその言葉に従う。」
カザック「ラセル様。」
ラセル「……あ。」
カザック「酔われましたかな?」
ラセル「……少し……夜風に、あたってくる。」
カザック「その方が宜しいかと。」
ナレーター「リザイアは密かに、使者に人払いを命じた。ルティアと女の戦いをするためであった。」
リザイア「今夜はやっぱり星が綺麗ですね、私はあの星座の方向へ2つ山を越えた
     マリーガルド国から参りましたの。ルティアさんはどちらからいらっしゃったのですか?」
ルティア「私は……。私の国はもうありませんから。」
リザイア「……?私、ルティアさんはどこかの王族のご来賓とお見受けしたのですが…………。」
ルティア「いいえ。」
リザイア「お国を持たないとは……商家でいらっしゃる?」
ルティア「いいえ。」
リザイア「……あなた、何者です?」
ルティア「……この国の捕虜です。」
リザイア「……馬鹿にしないでくださる?」
ルティア「森で倒れているところを救われ、この国の捕虜になりました。」
リザイア「…………信じられない。」
ルティア「本当の事です。」
リザイア「あなた、異国人ですね?」
ルティア「ええ。そうです。」
リザイア「何故異国人の捕虜がこんなところにいるの?」
ルティア「……ラセル王に命じられたからです。」
リザイア「嘘をおっしゃい。」
ルティア「嘘ではありません。」
リザイア「ラセル様が何故異国人をこんな大事な会へ招くのです。
     ラセル様は誰より異国の侵入者を憎んでいらっしゃるのに。」
ルティア「憎んで?」
リザイア「憎んでいらっしゃるわ。当然でしょう。ご自分のお父様を異国人に暗殺されてるのですもの。」
ルティア「!」
リザイア「ご存知ないの?あなたは本当に何故この場にいるのかしら。
     異国の侵入者なんて、よほど正等な理由がない限り、死罪と決まっていますのに。」
ルティア「……」
リザイア「もっとも、それを承知でディルスに進入するお馬鹿さんも、そうはおりませんけど。
     特にラセル様のお父様ベルサス王が暗殺され、炎のように怒り狂ったディルスが
     その報復の驚異を諸外国に見せつけてからはね。」
ルティア「暗殺……」
リザイア「見たところ、あなたには何の力もなさそうですけれど。
     だからと言ってこの衣裳会にいられては、わがマリーガルド国の信用にも関わりますわ。
     捕虜は捕虜らしく牢屋にお戻りなさい。」
ルティア「私、帰ります。」
リザイア「……気に入りませんわね。あなた何も言い返せませんの?」
ルティア「そんなつもりじゃ……」
リザイア「貴方のそのドレスの素材だってね、安物じゃありませんのよ。
     マリーガルドの誇る絹糸の最上級品ですわ。
     何故あなたがそんな不釣合いなものを身にまとっているのです。」
ルティア「これは……ラセル王が……」
リザイア「ラセル王、ラセル王、そう気安く呼べるような存在ですか貴方は!」
ルティア「あの、気に障ったのなら、謝ります。服もお返しします。」
リザイア「……そういうところが気に入りませんのよ!」
ナレーター「興奮したリザイア姫は怒りに任せてルティアを突き飛ばした。
       姫は非力であったが、胸の傷の癒えきらないルティアには十分すぎる一撃であった。
       ルティアは激しく体勢を崩し、バルコニーの手すりにぶつかった」
ルティア「あ……」
ナレーター「不運な事に、木製の手すりが老朽化により根元が腐敗していることを
       ルティアが理解した時には、体勢を立て直す時間がなかった。
       2本の手すりが庭園の闇へ落ちたと同時にルティアもまた同じ運命を辿る。」
ルティア「きゃああああああ!」
リザイア「ルティアさん!」
ナレーター「リザイア姫もさすがに手を伸ばしたが、時すでに遅く
       1人バルコニーに取り残されたのであった。殺人の恐怖を覚えながら。」
リザイア「……そんな……そんなつもりでは……」
ラセル「……っつつ」
ルティア「……ラセル王!?」
ラセル「……今度は飛び降り自殺か?いい加減にしてほしいな。」
ルティア「何故……」
ラセル「夜風に当たってたらリザイア姫の罵声が聞こえてな。近づいてみれば、面白い事もあるもんだ。」
ルティア「……何故、助けたの……。」
ラセル「さてな。」
ルティア「……一歩間違えば、貴方、大怪我してた……」
ラセル「俺がケガする事より、お前が死ぬことを避けたかったから。かな。」
ルティア「…………」
ラセル「……おい?」
ルティア「……がとう。」
ラセル「今、なんて言った?」
ルティア「………………ありがとう。」
ナレーター「その時ルティアは初めて命を救われた事に礼を言ったのだった。
       衣裳会を終え落ち着きを取り戻したディルス国。
  
       交差しはじめた2人の心をあざ笑うかのように忍び寄る魔性の影。
       次回、魔性の傷跡第3話。ご期待ください。」
fin

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