南の主リビアの消滅を代償に、魔法帝国クラリオンは大きな痛手を負った。

激変する世界の調律。

闇に蠢く魔性達が動き出す…



魔性の傷跡 第19話 『平穏への共謀』

魔性の傷跡
第19話 『平穏への共謀』

【登場人物】♂3♀1
スフレ(?歳)♂:魔性。西の副官。
エメダ(42歳)♂:ウェルナン国の大臣。
イース(20歳)♂:ダズットの若き王。
ヴェルベスラ(?歳)+ナレーター♀:魔性。南の副官。

【役表】
スフレ♂:
エメダ♂:
イース♂:
ヴェルベスラ+ナレーター♀:

【南の主の城】

スフレ「わぁ〜、これはひどい。城中水浸しだ。それになんだろう、この気持ち悪い花…まぁいいか。

    ヴェルベスラさーん!ヴェルベスラさーん!…あ、こんなところにいた。」

ヴェルベスラ「また勝手に入って来ましたのね。一体なんのご用ですか。スフレ様。リビア様はもういらっしゃらないんですよぉ〜。」

スフレ「ええっ〜。そうなんですかぁ〜。」

ヴェルベスラ「まぁ、しらじらしいですこと〜。」※花を編みながら。(これ以降も継続)

スフレ「まさかあの南の主(あるじ)リビア様が人間に破れるとは。これは大変だ!南の主が死んだなんて!」

ヴェルベスラ「ちょっと静かにしてくださいませんかぁ。」

スフレ「…それ、さっきから何してるんですか?」

ヴェルベスラ「花を編んでいるんです。リビア様のお墓に飾るのですわん。」

スフレ「お墓・・・?あははは、ヴェルベスラさんは変な魔性だなぁ。

    だから城中水浸しで花だらけなんですか。こんな無意味な事して何か良い事あるんですか?」

ヴェルベスラ「まったく呆れますわ。あれほどリビア様リビア様と熱をあげてらしたのに、よくそんな事が言えますのね。」

スフレ「だってもういないじゃないですか。」

ヴェルベスラ「はぁ。もういいですわ。私は所詮、元人間の魔性。

       スフレ様みたいに生まれついての魔性の方とはどうしても相入れない部分がありますの。」

スフレ「僕は別に差別するつもりはないんだけどなぁ。」

ヴェルベスラ「差別じゃなくて、区別してくださいませぇ。」

スフレ「ところで、ヴェルベスラさんはこれからどうするつもりなんですか?」

ヴェルベスラ「これから?そうですわねぇ〜、どうしましょうかぁ。」

スフレ「リビア様は副官であるヴェルベスラさんに、その力を継承することなく消滅しました。

    これだけ大きくバランスが崩れては、大変な事がおきますよね。」

ヴェルベスラ「大変なことですか?」

スフレ「南の魔性達は仕えるべき主を失い、暴れまわってるそうじゃないですか。

    そこに東のファスター様まで便乗してるとか。ここ数日は僕ですら破壊衝動が疼きます。

    上位魔性もそろそろ動き出しますよ。」

ヴェルベスラ「ああ、そのことですか。」

スフレ「こう言ってはなんですが、これはヴェルベスラさんのお力不足と言わざるを得ない。

    上位魔性が動くとすれば真っ先に狙われるのは南の副官たる貴方でしょう。」

ヴェルベスラ「ん〜…そうですわねぇ。」

スフレ「それで、何かアテはあるんですか?」

ヴェルベスラ「出家いたしますわ。」

スフレ「副官の責任を放棄して身を隠すと?」

ヴェルベスラ「はい。」

スフレ「それはもったいなぁ〜い!」

ヴェルベスラ「え?」

スフレ「せっかく南の副官まで上り詰めた強いお力をお持ちなのに!隠居なんて!もったいないです!」※詰め寄る

ヴェルベスラ「そ、それはどうも。」

スフレ「それに独り身の女性には危険がいっぱいですよ〜!」

ヴェルベスラ「は、はぁ。ちょっと近いですわ。スフレ様。」

スフレ「こう言ってはなんですが、そんなの誰も納得しません!

    いくら身を隠したとて南の副官の座を狙って、好戦的な上位魔性が次々と襲いかかってくるでしょう!

    その全てを返り討ちに出来ると思いますか?ヴェルベスラさん、たったおひとりで!」

ヴェルベスラ「が、頑張りますわ。」

スフレ「素晴らしい!エクセレント!けれど、残念。それは無理なんです。」

ヴェルベスラ「あら、決めつけないで欲しいですわ。」

スフレ「多勢に無勢という言葉がありましてね、残念ながらヴェルベスラさんには一匹狼を出来るほどのお力はありません。」

ヴェルベスラ「さっきから何が言いたいんですの。はっきり言ってくださいませ。」

スフレ「そうですねぇ〜、じらすのが好きなんですが。」

ヴェルベスラ「つまり、西に来いってことですか?」

スフレ「そんなそんな。『来い』なんて言ってませんよ。僕はその方がヴェルベスラさんのためになると思うんです。」

ヴェルベスラ「お断り致しますわ。」

スフレ「そうですか?」

ヴェルベスラ「西の主様は苦手です。私、リビア様だから契約を結んだのですわ。リビア様はとっても優しかったんですの。」

スフレ「僕のこと串刺しにしますけどね。」

ヴェルベスラ「あら、それはスフレ様がおいたをするからですわ。

       リビア様、最後には私に力を継承してくださるって信じてたのに。くすん。」

スフレ「お気持ちはお察ししますよ。」

ヴェルベスラ「リビア様の馬鹿。私に何も言わずに行ってしまうなんて…ひどいですわぁ。」

スフレ「そうですねぇ、お気の毒です。」

ヴェルベスラ「私こんなに、こんなにリビア様に尽くしてきましたのに。あんまりですぅぅ…」

スフレ「そうですねぇ…そろそろやばいかな。」

ヴェルベスラ「今だって、私の胸はリビア様でいっぱいですのに…それなのにリビア様は、私の事なんて、どうでも良かったんですわ…」

スフレ「あの、僕はそろそろ〜」

ヴェルベスラ「どうしたら良いかなんて、そんなスグ考えられませんわ。残された私がどれだけ、どれだけ辛いか…リビア様は…」

スフレ「あの〜」

ヴェルベスラ「リビア様の……馬〜〜鹿〜〜!」※ヴェルベスラの足元から巨大な彼岸花が出現する。彼女をのせたまま上へ伸びて行く。

スフレ「うわぁ〜…なんだこのでかいの…あ、さっきの気持ち悪い花?」

ヴェルベスラ「私がこんなに傷ついてるのに自分の意見ば〜っかり押し付けて、彼岸花も知りませんの!?」※手に持っていた花輪を投げつける。

スフレ「うわっ!ヴェルベスラさん、落ち着いて〜。降りてきてくださいよ、話し合いましょう。」

ヴェルベスラ「問答無用ですっ、特異花態(とくいかたい)-輪盛体(わせいたい)-!」

スフレ「あぶなっ!」

ヴェルベスラ「続いて、左盛体変化(させいたいへんか)ですわっ!」

スフレ「おおっと!…次から次に。うわっ!」

ヴェルベスラ「スフレ様、動かないでくださーい!」

スフレ「無茶言わないでくださーい!」

ヴェルベスラ「そうだ、彼岸花の花言葉を教えてさしあげますわ…」

スフレ「いらないですよー。」

ヴェルベスラ「想うは…あなた一人!」※四方からスフレに巨大な彼岸花が襲い掛かる。

スフレ「うわぁ!こ、殺す気ですかっ!?」

ヴェルベスラ「み〜んな死んじゃえばいいんですぅ!」

スフレM「(あ〜、これだから元人間は嫌なんだよ…)」

ヴェルベスラ「キライです…リビア様も。スフレ様も。大キライですわ〜〜〜!」

スフレ「そうですかそうですか、わかりました。出ておいで…僕の人形。」

ヴェルベスラ「あっ!?マリオネット!は、離しなさい!」※人形に羽交い絞めにされる。

スフレ「…ふぅ。それじゃヴェルベスラさんお元気で〜。」

ヴェルベスラ「あ、ちょっと!逃げますの!?ずるいですわ!」

スフレ「僕も忙しい身なんでね、次の予定が詰まってるんですよ。」

ヴェルベスラ「お待ちなさいませ!私怒ってますのよ!」

スフレ「もう会うこともないでしょうが、ヴェルベスラさんのお命が輝かしいものであるよう

    心からお祈りしてます。それでは〜。」

ヴェルベスラ「あ、こら!スフレ様〜!……もぉ。逃げ足だけは主クラスですわね。

       お人形さんは、いい加減離れてくださいませ、よいしょっと。

       ま、これだけ暴れておけば、もうしつこくはこないでしょう♪
       

       でも……これからどうするかなぁ。」


【ウェルナン/郊外の隠された地下牢】

エメダ「…本当に貴方がいらっしゃるとは。イース王。」

イース「やぁ、エメダ大臣。この鎖外してもらえないか?」

エメダ「非礼をお許しください。断じて外すことは出来ません。貴方は敵国の王です。」

イース「言ってみただけだ。まぁ構わない。それで、俺の体は、あれでもう見終わったのかな?」

エメダ「はい。書状の通り、生身の体一つでいらっしゃるとは。」

イース「これくらいしないと信じてくれないだろ?」

エメダ「イース王のお体は魔性に対抗出来る程の兵器と聞き及んでおります。正直、鎖で繋いでいても恐ろしい。」

イース「そうかなぁ。」

エメダ「それで、このような危険を犯してまで、この私に伝えたい事とはなんですか。ダズットの王たる貴方が。」

イース「うん、手短にいこう。ダズットにつかないか?」

エメダ「…同盟国を裏切り、敵国につけとおっしゃるのか?」

イース「わかっているとは思うが、我がダズットは四国同盟(よんごくどうめい)全てを敵視しているわけではない。

    ウェルナンに敵国と言われるのは心外だ。」

エメダ「…同盟国の敵は敵です。」

イース「その同盟国はウェルナンの意志を無視して魔性と戦う気満々だそうじゃないか。それでも仲間なのか?」

エメダ「……同盟は同盟です。仲間とは違います。」

イース「あぁ、やっぱり不満そうだ。それは当然だな。」

エメダ「確かに不満はあります。しかし、それとこれとは話が別です。」

イース「別じゃないだろ?」

エメダ「別です!」

イース「噂通りお堅いなぁ。少しほぐしてやろうか。なぁスフレ?」

スフレ「まったくですねぇ。」

エメダ「何者!?」

スフレ「お邪魔致します。」

エメダ「どこから入った!?イース王、約定(やくじょう)違えたな!」

イース「そう怒るなよ。顔が真っ赤だぞ。」

エメダ「侵入者は……切る。覚悟!」※攻撃

スフレ「…ふふっ。いたぁい。」※肩を大きく切られる。しかしノーダメージ。

エメダ「な、なんだ…」

スフレ「喧嘩っぱやいんですねぇ。大臣様。」

ナレーター「そう言うとスフレはクルリと身を翻した、その次の瞬間。」

エメダ「ふ、増えた!?」

スフレ「さぁ〜て、どれが本物の私でしょうか。」

イース「確率10分の1。」

エメダ「くそっ…どれだ…」

スフレ「当たったら、ご褒美をあげましょうねぇ。」

エメダ「おのれ、ふざけおって…あやかしめがぁ!」※攻撃

スフレ「ざんねん。大ハズレ〜!」※カウンター

エメダ「ぐあっ!」

スフレ「痛かったですか?スミマセン。今のはハズレのペナルティですよ、そして正解は…」

ナレーター「スフレの体が次々に崩れゆき、カラカラと音をたて地面に転がった。」

イース「全部ニセモノ。」

エメダ「イース王、これは一体…」

スフレ「(虚空から姿を表す)なんなんでしょうねぇ。手品かな?」

エメダ「貴様…何者だ!」

イース「魔性だよ。」

エメダ「魔性!?」

スフレ「西の副官スフレ。以後お見知りおきを。」

エメダ「イース王…あなたは魔性と通じていたのか…!」

イース「驚かせてすまなかった、体感してもらうのが一番わかりやすいと思ってな。」

スフレ「お気に召しましたか?エメダ大臣様。」

エメダ「一体どういうことですか。なぜ魔性と通じているのです!こんな事が許されるはずがない!」

イース「毒をもって毒を制す。敵が人間でないのなら、自らも人間でなくなればいい。」

エメダ「イース王…貴方は、まさか…魔性と契約を…」

イース「魔性にならずとも、俺はとっくに人間ではないらしいぞ。」

スフレ「イース王のガチャガチャした体は、魔性にとって魅力的とは言えないですからねぇ。」

イース「俺はこの体に誇りを持っている。どんな臓器を取り出すのも、どんな部品を組み込むのも、ディルスを叩き潰すステップだ。

    あの英雄かぶれの剣技国の皮をはいで、狂った殺人鬼どもを引きずり出しズタズタに引き裂いてやる。

    俺は殺人鬼を殺す殺人鬼だ。手段は選ばない。例え人外の力を借りようと、例え自らが人外となろうと、この目的は必ず果たす。

    エメダ大臣、ウェルナンの豚王に伝えてくれ。そのまま生活習慣病で死にたいのなら、ダズットにつけと。」

エメダ「無礼な!我が主君を侮辱するか!」

スフレ「おっと悪い話じゃないんですよ〜。イース王は口が悪いからなぁ。

    戦は全てダズットとミザールが引き受けるとおっしゃってるんですよ。」

エメダ「…戦を、全て?」

イース「あぁ、ダズットは戦いたくてうずうずしている。なぁ、ダズットの戦士の条件は知っているか?」

エメダ「…存じません。」

イース「それは良かった、隠しているからな。条件とは『鉄の心臓』をその身に埋め込むこと。

 
    人の心臓を捨て、代わりに動力源を埋め込むんだ。ダズットの戦士は人であって人ではない。

    そんな奴らが戦を前にして、大人しく控えていられると思うか?無理に決まっている。もちろん俺もだがなっ!」

ナレーター「そう言うとイース王は自らを縛り付けていた鎖を引きちぎった。」

スフレ「ん〜鉄の鎖を素手で♪すごいパワーですよね。魔性もビックリ。」

イース「約束通り武器は全て外してきたが、この鉄の心臓だけは外せない。

    さっき身体検査でばれなくて正直ホッとした。外すと死んでしまうんだ。

    ただし、ここから生み出されるエネルギーは我らに超人的な力を与えてくれる。

    ディルスの剣など片手でへし折れる。」

スフレ「お〜怖い怖い。それにこういっちゃなんですけど、僕も結構強いんですよ。魔性の中でもね。

    僕がダズットの応援してる間は、大抵の魔性は手を出せませんし、出させません。

    ねぇ、エメダ大臣。良い話だと思いませんか?これこそがウェルナンの求めた平穏じゃありませんか?」

イース「そうだ。ウェルナンは全面的に食糧供給や医療に努めてくれれば良い。あとの事は全て我らに任せるんだ。」

エメダ「しかし…同盟国を…裏切るなど…」

スフレ「四国同盟はウェルナンを失ってはどれだけ大変か、本当の意味でわかってないんですよ。

    だからウェルナンの意見をないがしろにするんです。今こそ同盟国にウェルナンの価値を示してやりましょうよ。」

エメダ「……ウェルナンの価値……」

イース「俺は弱き者に戦を強いることはしない。戦場以外で輝く者を何故戦場に狩り出す。ディルスは愚かだ。」

スフレ「全くですねぇ。それにエメダ大臣、知ってますか?ディルスは大切な事を隠しています。」

エメダ「……」

スフレ「知りたいですか?」

エメダ「……聞いたところで信憑性がない。」

スフレ「ショック、これでも魔性1の情報通なのに。まぁ、数日たてばわかることですけど。」

エメダ「…どういう意味だ。」

スフレ「ふふっ、クラリオンが魔性に敗れました。」

エメダ「まさかっ!?」

スフレ「エルザータ王妃死亡、王位継承第一候補者レイス消息不明、クラリオン城大破、復興見通し立たず。

    近々入るであろう人間同士の連絡は多分こんな感じですかね。」

エメダ「馬鹿な……あの魔法帝国が…」

スフレ「唯一魔性に対抗しうる国家クラリオン…でしたっけ。いやぁ〜、こうなってはおしまいですね。」

イース「人の身で魔性に対抗など出来るものか、あの国も愚かだ。」

エメダ「……」

スフレ「そういえば消息不明のレイスさんとディルス王はつい最近、恋愛絡みでいざこざがあったとか。

    僕の情報だと、クラリオン城に魔性が現れた時…ディルス王もお忍びで現場にいたみたいですよぉ。

    これってどういうことなんでしょうねぇ。」

イース「ほぉ、それは聞いてなかったな。」

スフレ「情報は握っとくに限りますから。」

エメダ「……確かに、レイス様とラセル王の件は四国会議でも話題になっていた。

    レイス様はディルスの保護下にいながら、事故で生死の境をさ迷うほどのご重態となった。その時ラセル王も現場にいたと。」

スフレ「ああやっぱり〜。そんな王様、信用していいんですか?」   
 

エメダ「……ラセル王。」

イース「沈みかかった船と運命を共にすることはない。俺はウェルナンを救う。この手をとれ。」

エメダ「……ウェルナンの民は…弱いのです。」

イース「あぁ。」

エメダ「戦う意志すらもありません。」

イース「知っている。」

エメダ「ウェルナンが望むのは『今』の平穏…ただ…それのみ…」

イース「……」

エメダ「本当に…それでいいのですか?」

イース「くどい。…悪いようにはしない。」※手を差し出す

エメダ「…やはり、ダメだ!」

スフレ「どうしてですか?」

エメダ「いくら、ウェルナンのためとは言え…魔性にすがるなど…」

スフレ「おや、失礼な。」

エメダ「私の負けだ。殺すなら殺せ!」

イース「…殺す?」

スフレ「はは。」

エメダ「……(目を瞑って正座する)」

スフレ「嫌だなぁ。殺したりなんかしませんよ。でも、その固すぎる頭を少しやわらかくしてあげましょう。」

ナレーター「スフレは懐(ふところ)から青い植物を取り出し、口にふくむ。
      

      それを数回咀嚼(そしゃく)し、エメダに口移した。」

エメダ「ぐうっ!?何をするっ!?」

スフレ「ヴェルベスラさんのとこからこっそり拝借してきた植物、人間の頭をやわらかくするそうです。」

エメダ「がはっ。がはっ。…ぐ、なんだ…」

スフレ「肩の力を抜いて、もう一度よく考えてくださいよ。

    四国同盟はもはや、同盟とは言えないと思いませんか?」

エメダ「…はぁ…はぁ…がはっ。だめだ、考えられぬ…」

スフレ「これからディルスと組んでいても、なんにも良いことはありません。

    戦、戦。あいつらは戦うのが好きなんですよ。ウェルナンは違う。

    ウェルナンは平和を愛する国です。ただただ平和を愛するんです。

    そうだ、マリーガルドのお姫様。小さくて可愛らしいですよねぇ。

    彼女はいずれこちらに来てもらいましょう。ほら、これでみんな幸せです。

    王に教えてあげましょう。みんな幸せになれるって。」

エメダ「……王…に…」

イース「さぁ、この手をとれ。ウェルナンの平穏のために。」

エメダ「ウェルナンの…っぐ…平穏の…ために…」

スフレ「そう、平穏のために。王に伝えるのです。」

エメダ「はぁ…はぁ…伝えなくては……王に……」

スフレ「そうです…(微笑む)」

ナレーター「スフレの甘い囁きが、エメダの麻痺した脳内に心地よく響く。

      差し出されたイース王の手を、エメダは握った。      

      次回、魔性の傷跡第20話。ご期待ください。」

fin

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