瀕死のレイスは一命をとりとめ、ラセルは干上がったループス河の底でルティアを救出した。

人の世の惑いは魔性の娯楽。ディルスは魔性の注目を集めていた。

その一方で、ディルスにも変革の時期が訪れようとしていた。






魔性の傷跡 第13話 『開かれた道』

魔性の傷跡
第13話 『開かれた道』

【登場人物】♂3♀3
ラセル(26歳)♂:ディルス国の若き王。
スフレ(?歳)♂:魔性。西の副官。
スーラ(88歳)♂:ディルス国の宰相。
リビア(?歳)♀:魔性。南の主。
ツドイ(35歳)♀:クラリオンの元帥。
ヴェルベスラ(?歳)+ナレーター♀:魔性。南の副官。

【役表】
ラセル♂:
スフレ♂:
スーラ♂:
リビア♀:
ツドイ♀:
ヴェルベスラ+ナレーター♀:



ナレーター「瀕死のレイスは従者の回復魔法で一命をとりとめ、

      ラセルは干上がったループス河の底でルティアを救出した。

      人の世の惑いは魔性の娯楽。ディルスは魔性の注目を集めていた。」


【南の主の城/浴場】

リビア「…またおぬしか、良く飽きもせず何度も何度も通うてくるわ。懲りぬ男よ。]

スフレ「愛しい方に会いに来るのは苦になりませんよ。」

リビア「ふん。その軽すぎる口を引き裂いてやりたいのう。」

スフレ「南の主(あるじ)様の殺意に引き裂かれるのなら、気持ち良いかもしれませんね。」

リビア「黙れ。お主の声は耳障りだ。ヴェルベスラ!おらぬか!ヴェルベスラ!」

ヴェルベスラ「はぁ〜い。お呼びですかぁ、リビア様。」

リビア「また西の使い魔が妾(わらわ)の湯浴みを覗きにきおった。つまみ出せ。」

ヴェルベスラ「(浴場に入る)失礼しまぁ〜す。」

スフレ「覗きではありませんよ、芸術鑑賞です。」

ヴェルベスラ「リビア様の裸体を見たいお気持ちはわかりますけどぉ。

       コレクションにされないうちにお引取りくださいませ〜。」

リビア「(服を纏いながら)そのような男をコレクションに加える気はないぞ。」

ヴェルベスラ「あらら〜。嫌われてますのねぇ、スフレ様。」

スフレ「残念です。」

リビア「はよう、つまみだせ。多少傷つけたとて構わぬ。

    西の主には言うておく。」

ヴェルベスラ「はぁーい。だそうです。ケガしないうちにお帰りいただけませんかぁ?」

スフレ「まぁそう言わないでくださいよ。今日は芸術鑑賞のためだけに来たわけじゃないんです。

    面白い話があるんですよ。北のシセルド様の……」

リビア「(睨む)」

スフレ「おっと、禁句でしたね。」

リビア「その名を聞くだけで虫唾(むしず)が走る。いくら西の副官とて

    妾の前で二度とその名を口にすること許さぬ。」

スフレ「気をつけます。でもリビア様ご存知ですか?あの方秘蔵の姫君が、あの方の手を離れたこと。」

リビア「なに……」

スフレ「しかもディルスとかいう古臭い国で異国人として拘束され、

    挙句の果てにクラリオン人に拉致されそうになったとか……」

リビア「クラリオン……あの魔法帝国か。」

スフレ「はい、愚かにも魔性に喧嘩を売っているクラリオンです。

    ふふ、波乱万丈で面白いお姫様だ。目が離せませんね。」

リビア「ふん……なかなか興味深い話。礼を言おうかの。ご苦労な情報屋よ。

    して、そのような事を妾に告げてなんとする?」

スフレ「私の知りうる情報を愛しいリビア様のお耳に入れたかっただけですよ。」

ヴェルベスラ「ありがた迷惑ですわよぉ。」

スフレ「あの方の事は、特にお気になさっているようでしたから。」

リビア「しらじらしい男よ。おぬしの思惑(おもわく)など見え透いておるわ。」

ヴェルベスラ「えー、スフレ様に思惑なんてあるんですか。わたくし全然わかりません〜。」

リビア「この男は誠に呆れ果てた男よ。わらわの怒りを買おうとしておるのじゃ。」

ヴェルベスラ「そうなんですかぁ。スフレ様〜。」

スフレ「とんでもない、まさかそんな!」

リビア「どこまでも鼻につく。そのような安っぽい挑発で売られた喧嘩なぞ

    臭ぉて買う気にもならぬわ。ヴェルベスラ、後はまかせる。」

ヴェルベスラ「はぁ〜い。」

スフレ「ふふふ。リビア様はかわいいなぁ。」




【ディルス城/治療室待合】


ツドイ「失礼致します!」

スーラ「ツドイ元帥(げんすい)殿、お早いお着きで。」

ラセル「クラリオンから遥々(はるばる)良く来てくれた。」

ツドイ「ラセル王、ご挨拶は後ほど、レイス様はどちらですか。」

ラセル「その仕切りの向こうだ。」

スーラ「ツドイ殿、心を落ち着かせてくだされ。わずかな振動も今のレイス様にとっては

    大きな痛みになりますゆえ、どうぞお静かに。」

ツドイ「承知。」

スーラ「ではどうぞ。」



【レイスの治療室】


ツドイ「(レイスを見て)……っ……なんと…」

ラセル「レイスの従者に回復魔法を使える者がいて助かった。」

スーラ「ディルスの医師では、とてもお命を繋ぐこと叶いませんでした。」

ツドイ「…なんと、おいたわしいお姿……レイス様……あぁ…」

ラセル「ツドイ元帥、レイスは助かるだろうか。」

ツドイ「……助からないと、言えると…お思いですか。」

ラセル「……すまない。」

ツドイ「これは、通称『枯渇(こかつ)』と呼ばれる状態です。」

スーラ「枯渇、言葉から察するに魔力が枯れるという事ですかな?」

ツドイ「魔力は人体の中にはありません。枯れるのは生命力です。」

スーラ「生命力が枯れる?理解に苦しみますな。」

ツドイ「魔力を使うためには通常、エナジーを駆使します。

    エナジーとは簡単に言うと、人間が活動する為の力です。

    運動したり、勉強したり、そういった事に使う力と言えばわかりやすいですか?」

スーラ「ほぉ。そういった力が基礎になっていたのですか。魔術とはまこと興味深いですな。」

ツドイ「エナジーには限界があります。エナジーが無くなった状態で魔術を使用すると

    生命の維持に必要な『生命力』までも代償にしてしまいます。

    血流、心拍、細胞に至るまで全てを動かす力、それが『生命力』です。」

スーラ「なんと……」

ツドイ「生命維持に必要な力が無くなれば当然、待っているのは死です。

    レイス様は『生命力』の……ほとんどを失われています。」

スーラ「確かに……そのように見てとれますな……」

ツドイ「エナジーを失い、生命力に多大なダメージを受けること。これが枯渇です。

    レイス様は薄皮一枚でお命を繋ぎとめられた……しかしっ……」

スーラ「…ツドイ殿?」

ツドイ「エナジーは時とともに回復します。しかし『生命力』は回復させる事が出来ない。」

ラセル「何……回復出来ないだと!?レイスは治らないというのか……」

ツドイ「枯れた命は二度は咲きません。言うなれば、補修する事しか出来ないのです。必ず、重大な後遺症が残る……」

ラセル「…どのような後遺症が。」

ツドイ「わかりません。声が出せないか、足が動かないか、あるいは全身麻痺か……」

スーラ「……」

ツドイ「レイス様ご重体の知らせをうけ、私だけでも先にと幾重(いくえ)の移動術を重ねて

    急ぎクラリオンから参りましたが……ここまでとは…」

スーラ「ツドイ殿に続き、クラリオンの回復術に長けた方々が到着すると伺っておりますが、いつ頃になりますかな。」

ツドイ「明後日です、それまでは私の全力をレイス様に注ぎます。」

ラセル「ああ……頼む。」

ツドイ「ラセル王。」

ラセル「なんだ?」

ツドイ「殴らせてください。」

スーラ「ツドイ元帥殿!?」

ツドイ「今は何故、レイス様がこのような事になったのか。誰に責任があるのか。

    そういった事を議論する時間はありません。ただし、レイス様がディルスにいる間

    レイス様の身の安全をディルスは保障しました。そうですね?」

スーラ「しかし、これはレイス様が……」

ラセル「スーラ、いい。」

ツドイ「…」

ラセル「経緯は関係ない。結果、こうなってしまった。

    そしてツドイには協力してもらわなければならない。気が済むまで殴れ。」

ツドイ「…お見事。ふん!(拳でラセルの顔を殴る)」

スーラ「ツドイ殿!」

ツドイ「まばたきもしませんか。いい目をしてらっしゃる、ラセル王。」

ラセル「どうした、もういいのか。」

ツドイ「はい。レイス様の治療を開始します。しばらく、ディルスでお世話になります。非礼をお許しください。」

ラセル「ああ、頼む。」

スーラ「やれやれ……」



【 南の主の城】

ヴェルベスラ「(攻撃をしかけながら)なかなかすばしっこいですわ〜!」

スフレ「(かわしながら)ヴェルベスラ様が遅いんじゃありませんか?」

ヴェルベスラ「そうかしら〜?」

スフレ「ほらほら、こっちですよ!」

ヴェルベスラ「まってぇ〜。」

スフレ「ふふふ。」

ヴェルベスラ「うふふふ♪」

リビア「ヴェルベスラ何をやっておる、副官をクビにするぞ!」

ヴェルベスラ「えー!嫌ですぅ。。スフレ様のせいでリビア様に怒られちゃったじゃないですかぁ。」

スフレ「おやおや、お可哀相だ。」

ヴェルベスラ「責任とってください〜!」

スフレ「それは無理な相談です。」

ヴェルベスラ「もぉ!わたくしだってぇ、怒るときは怒るんですからね〜!」

スフレ「ん……なんだ……花びらが……」

ヴェルベスラ「舞い落ちる桜、香り立つ百合、花の命は短いからこそ美しいですわねぇ。」

スフレ「そうですね、同意しますよ。」

ヴェルベスラ「ならばスフレ様、あなたも美しく散らせてさしあげます。」

スフレ「っつ……花びらが……刃のように……」

ヴェルベスラ「桜の花吹雪。舞い散る花弁は鋭く貴方を切り刻む。」

スフレ「ううっ!」

ヴェルベスラ「綺麗なお花に甚振(いたぶ)られるなんて、幸せですわねぇ。」

スフレ「くっ……(逃れようとする)」

ヴェルベスラ「無駄ですよ〜。その花吹雪からは逃げられませんよぉ。」

スフレ「なかなか、やりますね。」

ヴェルベスラ「薄桃(うすもも)色の桜を真紅に染めあげてくださいませ〜、貴方のその血で♪」

リビア「ほほほ、ヴェルベスラ良くやった。褒めてつかわす。」

ヴェルベスラ「ほんとですかぁ?うれしいです〜。」

リビア「だが、このままでは本当になぶり殺してしまうのではないか?」

スフレ「おやおや、心配していただけるなんて、光栄です。」

リビア「ふん、そなたは西の主の寵愛(ちょうあい)を受けておるからな。

    ……幾度も無礼を受けた妾としては殺してしまいたいがのぅ。」

スフレ「殺意を向けるその瞳すら愛しい。やはり貴方は可愛いお方だ。」

ヴェルベスラ「スフレ様、いい加減、諦めなさいませ〜。」

スフレ「おや、何をですか?」

ヴェルベスラ「リビア様は貴方のことなどお相手になさりません。」

スフレ「それは全くかまいません。」

ヴェルベスラ「はぁ?」

スフレ「私は愛でたいものを愛でる、いとおしみたいものをいとおしむ。見返りなど求めないのです。」

リビア「気色の悪いキチガイめ。」

スフレ「愛していますよ、リビア様。あなたがシセルド様を愛しているように。」

リビア「…そなた、それ程までに死にたいか。ならば望みどおりにその体、無数にちぎり滅ぼしてやろう!」

スフレ「っあああああっ!」

(無数の針がスフレの体内から飛び出す)

ヴェルベスラ「いやぁん、グロテスク♪リビア様の技は醜くていけませんわぁ。」

スフレ「あああああ!」

リビア「このような男、わらわのコレクションに加える気もない、いくら醜く死のうとてかまわぬ。

    自らの体内から発する無数の針の味はどうじゃ?

    妾の前であの男の名を出したこと、万死に値するわ。いさぎよう死ぬがよい。」

スフレ「ああ…はははっ……たまらない!リビア様、あなたは本当に!本当に可愛い!」

(スフレの体から煙がたちこめる)

ヴェルベスラ「あぁん!煙幕!?」

リビア「ちぃ!」

スフレ「はははは!また来ますよ、愛しのリビア様。」

(スフレがいたあとに、一体の人形が転がる。)

リビア「……マリオネットか、妾がこのような替え玉にひっかかるとはのぅ。ふっ。」

ヴェルベスラ「ストーカーって嫌ですねぇ。」



【レイスの病室】

(ツドイは一人、レイスに治療を施している。)

ツドイM「レイス様が何故このような事になったのか、今はそれを考えている場合ではない。

    だが考えずにはいられない。
 
    レイス様……真面目で、明るく、才能に溢れ……

    これからではなかったのか!レイス様の幸福は!

    近い将来、必ずや正式にクラリオンの王位に着かれるはずだった。

    はずだった…何故だ、何故こんな事になった。
 
    レイス様のお体はもはや命を繋ぐ事にすら悲鳴をあげている。

    ディルスへの憎しみばかりがつのる。とてもこの感情を抑えきれない。」



ツドイ「おのれ…ディルス……」


(ツドイの涙がレイスの腕に落ちる。レイスがうっすらと目をあける。)


ツドイ「……レイス様!?」


(微かにレイスの唇がかすかに震える)


ツドイ「……ち……が……う……?」


(レイスはまた瞳を閉じる)


ツドイ「……………違う?」


(沈黙が流れる)


ツドイ「貴方は……違うと……言うのですか……レイス様…

    ……では、私はこの怒りをどこに、誰に、向ければいいのです……」



ラセルM「気が済むまで殴れ。」



ツドイ「…今も残るこの拳を受けとめた、あの若き王の感触。

    わかっている。ああ、わかっている。あの王が、悪ではない事くらい。」


ラセルM「ツドイには協力してもらわなければならない。」


ツドイ「協力?レイス様をお助けする為ならば何でもしよう。

    協力してもらわなければならないのはこちらとて同じ事。

    これを協力というか、利用と言うかはわからないがな。」


ラセルM「どうした、もういいのか。」


ツドイ「…あの目は、悪くなかったな。ラセル王。この後はどう出る。

    事と次第によってはエルザータ様は決してお許しにならない。クラリオンは見ているぞ…」



【ラセル執務室】

スーラ「先ほどは、失礼致しました。」

ラセル「何がだ?」

スーラ「少し過保護だったようですじゃ。ラセル様はこの数日で随分変わられましたな。」

ラセル「変わった?」

スーラ「先日までのご様子と違うのは誰が見ても明らかです。ほっほっ。」

ラセル「変わったつもりはないが……確かに先日までの迷いは無くなった。」

スーラ「迷いを断ち切った時、人は変わるもの。良くも悪くも。」

ラセル「良くも悪くも、か。」

スーラ「ツドイ殿にあれほどの憎悪を向けられ、よくぞ耐えられました。

    今までのラセル様では、あの憎悪に立ち向かわずにはいられなかったはず。」

ラセル「……そうかもしれないな。」

スーラ「人の憎悪を受け入れる事は、なかなか難しい事ですじゃ。」

ラセル「ツドイのあの怒りは仕方がない事だ。

    俺が同じ立場だったなら1度殴っただけでは止まらない。レイスは俺の大切な弟……」

スーラ「ほぅ。」

ラセル「いや、違うな。弟ではない。大切な……ライバルだ。」

スーラ「そうですか。」

ラセル「レイスがこんな事になったのは、俺にも否がある。あいつの心の奥深くを傷つけていたのは、俺なんだ。」

スーラ「人の心がおわかりになるように、なられたのですかな。」

ラセル「わからないさ。人の心など。ただ……あの時のレイスの言葉からは『伝わってきた』。

    俺は初めてあいつの本当の声を聞いたような気がした。」

スーラ「本当の声に耳を傾けることもまた、今までのラセル様には出来なかったことですな。」

ラセル「お前はさっきから俺を褒めてるのか貶(けな)しているのか。」

スーラ「どちらもですじゃ。」

ラセル「まぁいい。今はレイスを回復させる事が最優先だ。絶対に、あのままにはしておかない。

    スーラ。何かディルスに出来ることはないだろうか。」

スーラ「ラセル様はどう思われますかな?」

ラセル「そうだな……『枯渇』だったか。あれはディルスの医療では、手も足も出なかった。

    今はクラリオンの回復魔法が唯一の頼みだ。」

スーラ「そうですなぁ。」

ラセル「ディルスに出来ることは……ツドイと、じき到着するクラリオンの医療チームのサポート。

    それと、レイスの回復に最適な環境の提供……くらいか……」

スーラ「間違ってはおりません。ですが、一つお考えください。」

ラセル「なんだ?」

スーラ「何故、ディルスの医療ではレイス様を癒せず、クラリオンの医療では癒せるのですかな?」

ラセル「それは、クラリオンは回復魔法が使えるからだろう。」

スーラ「左様です。ならば何故、ディルスは魔術が使えませぬ?」

ラセル「知識がないからだ。」

スーラ「何故知識がありませぬ?クラリオンとの同盟は300年の歴史、もっと早くに魔術を学ぶことは出来たはず。」

ラセル「魔術は300年も前にはなかった、せいぜい100年……」

スーラ「100年学べば充分ですな、何故学ばなかったと思われますか?」

ラセル「…戦だ。敵国との戦いに明け暮れ、新しい事を学ぶ時間も、資金も無かった。」

スーラ「その通りです、では今のディルスはどうですかな?敵対国はくすぶっているものの、戦には及んでおりませぬ。

    では問題は資金です。」

ラセル「金……か。」

スーラ「年間の魔術講習だけで、あれだけのコストがかかっています。魔術はかなりの金食い虫。

    今の状態で急激に魔術を導入すれば、国が傾きます。」

ラセル「だが、ゆっくりしている時間は無いな。」

スーラ「はい。一刻の猶予もございませぬ。」

ラセル「不足しているのは資金……か。確かにそうだな。」

スーラ「ここで一つご提案をしても、宜しいですかな?」

ラセル「当たり前だ。」

スーラ「では申し上げましょう。国を開きなされ。ラセル王。」

ラセル「なっ……国を……」

スーラ「老いぼれの戯言と一笑するも王のご意志1つ。300年閉ざされた門はそう簡単には開きませぬ。血も流れまする。」

ラセル「国を……開く…」

スーラ「しかしこの老いぼれには聞こえるのです。時代の音が。

    門を叩く音が外から内から鳴り響いておりまする。時がきたのですじゃ。開国の時が。」

ラセル「開国の……時…!」

ナレーター「運命の鐘が鳴る。ディルスを震わす、運命の鐘。

      その音色は遥か遠くまで響き渡った。

      次回、魔性の傷跡第14話。ご期待ください。」

fin

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